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濡れた髪をかき上げながら
目の前に来ると微笑み
「……近くに住んでるの?」
「……はぁ……まぁ……」
警戒注意報が頭の中で発動。
「名前は?」
「え?」
「キミの名前教えて」
「……留美……だけど」
名前を言ったら
その可愛らしい笑顔で
「留美、ね」
当たり前のように呼び捨てして
人懐っこい笑顔を見せたかと思ったら
次の瞬間
その人の唇が、私の唇に軽く触れた。
彼の前髪から落ちた海の雫が、私の頬に伝う。
………………何、今の。
呆然とする私とは正反対に
全く悪びれない顔で
「また会えたら遊ぼ」
そう言って笑うと
一度、マリンの頭を撫で
砂浜からの階段を上がって行く。
が、階段の途中で立ち止まり
振り返ると
「あ、オレね、孝典」
それだけ言うと去って行く後ろ姿。
一瞬の出来事は小さな嵐みたいに
通り過ぎてった。
海の上では
見る人の心奪う真剣な顔
砂の上では
初対面で唇を盗むワルい顔
彼はいったい何者……?
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