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学園生活の中でも、入る機会があるかないかの校長室。
私は拳をノックのかたちに構えたまま、なかなかその扉を鳴らすことが出来ずにいた。
え、だって、校長室に呼び出しって、よっぽどの事がないとそんなこと無いでしょ?
私は比較的大人しく真面目に過ごしてきたはずだし……なにかしたっけ?
あるとしたら、昨日友達に借りた消しゴム返してないってことだけ……。
まさかそれ?
消しゴムを貸してくれた親友はそんなに心狭くないはずだよ。
「お、風早?そんなとこでどうした」
いつまでも校長室の前にいるもんだから、先生から声をかけられてしまった。
声をかけてきたのは、社会の教師の笹本樹生先生。
一部の生徒からは、ささもとたつきで『ささき』って呼ばれてる。名前変わってんじゃん。
ちなみに私は『たっちゃん先生』って呼んでる。自己紹介で呼んで欲しいって言ってたから。
授業の真っ最中の今に廊下にいるってことは、今は授業はないってことか。
「てかお前、校長室に呼ばれてたなー。早く入った方がいいんじゃね?」
「だって、呼び出された理由が分からなくて……だって私、特に問題とか起こしてないはずですし」
「あほう、呼び出されたやつは大抵、その理由が分からねえもんなんだよ。理由知りたいならはよ入れ」
「ええ……」
「もう、めんどくさいやつだな」
たっちゃん先生は頭をかくと、いきなり校長室の扉に手をかけた。
そしてそのまま扉を開け放った。
「ちょ、何してんですかたっちゃん先生!」
「あ?お前が入らないからだろーが。……すいません、風早が部屋の外でもだもだしてたから連れてきました。……おら、入れ」
「ちょ、っと、!」
無理やり部屋に押し込められた形で入室した私に、たっちゃん先生は一度悪意のある微笑みを向けた。
「事後報告、よろ」
それだけ言って、ピシャリと部屋が閉まる。
確かに、部屋の外でもだもだしてたのは認めるけどさ!
女の子に対する、生徒に対する態度ってもんが、あるでしょう!!!
たっちゃん先生に小さな怒りの炎を燃やしていた私は、これから自分にふりかかる災難など知る由もなかった。
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