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10話:7月22日(金)③
チャイムが鳴り、授業が終わった。昼休みになり教室は解放感に包まれる。
「正志! 来週の祭り一緒に行こうぜ! どうせ暇だろ!」
「どうせとか言うな!」
声をかけてきたのは同じクラスの如月進。僕の数少ない友達だ。彼は僕みたいな勉強しか取り柄のないような地味メガネとは正反対の茶髪に染めた陽キャなのだが、なぜか気が合う。
祭りとはもちろん、来週の火曜日に行われる祭りだ。
「何だよ。じゃあ何か? 誰か一緒に行くような人がいるってのかよ」
「……」
僕の脳裏に昨日の咲が思い浮かんだ。正直れからは父さんへの恐怖心でそれどころじゃなかったけど、そういえば祭りに誘われてた……。
「えっ!? まさか……いるのか……? 一緒に祭りに行くやつが……。正志に!?」
「え、えっと……」
「もしかしてあの子か、佐山さんか!」
バレた。一瞬でバレた。
「なんでそれを!」
「やっぱりかーー!! ずっと仲良いなと思ってたけどやっぱりそうなったか!! ああもう! どうぞ!! 末永くお幸せに!!」
進は陽キャなわりには彼女の影が全く見えない。
「い、いや、僕と咲はそういう関係じゃ……」
「は?」
進は急に真顔になった。
「いや、一緒に行こうって誘われたんだろ? 祭りに」
「う、うん」
「それってもうお祭りデートじゃん。ド定番デートじゃねえか」
「デ、デート……」
「そう、それはデートだ」
進は諭すように言う。
もしかして、あの時咲の様子がおかしかったのは……そういうことなのだろうか。
「まあ、どっちにしても向こうが正志のことを好きなのは確定だから自分の気持ち、ちゃんと整理しておけよ」
「う、うん……」
その日の帰り、僕は咲の顔をまともに見れなかったし、まともに話せもしなかった。少し寄った場所があっていつもより長い時間一緒に咲といたのに、だ。
ずっと考えていた。僕は咲のことをどう思っているのか。咲とこれからどうなりたいのか。今まで通りの友達の関係が良いのか。それとも……。
帰り際、咲は顔を赤らめながら言った。
「来週のお祭り、楽しみにしてる」
「僕も楽しみにしてる」
僕の口は勝手に動いていた。この瞬間、僕は気が付いた。
僕は咲のことが好きなんだ。
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