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12話:7月23日(土)②
その日の夜、僕は東京行きの電車に揺られていた。
あれから、父さんに関する様々な話を聞いた。結果から言うと、父さんに異常なところは見られなかった。
おじいちゃん、おばあちゃんの話によると、父さんは子供の頃から成績優秀で運動神経も良い。加えて、小学校と中学校では学級代表を務めるほど周りから信頼されていたThe・優等生だったらしい。正直、子供可愛さに2人が嘘をついているという可能性も無きにしも非ずだが、話を聞いてる限りではそんな様子もなかった。襖の奥からアルバムを引っ張り出してもらって、写真も見せてもらった。そこには友達に囲まれている笑顔の父さんが写っていた。
父さんが実家と仲が悪かったのも、よくあるものだった。父さんの進路について仲違いになったらしい。
父さんは殺人鬼ではないのだろうか。いや、ある出来事をきっかけに殺人に目覚めるってこともあるし……。父さんが殺人鬼であるという疑いを確証に変えるために話を聞きに行ったつもりだったのに、疑いが薄まるという結果になった。
一応、おじいちゃんおばあちゃんには父さんに今日のことを伝えないように言っておいたけど、元々こっちから連絡する気はないとおじいちゃんが食い気味に言ってたから心配はないと思う。
『次は〇〇駅~。〇〇駅~』
そんなことを考えていると最寄り駅に到着した。時間は11時過ぎだった。
やっぱり自分の父さんが殺人鬼だなんて偶然は出来過ぎか。あの晩、父さんが怒鳴ったのも咲が言ってたように自分が担当してた事件だったり、知り合いがが巻き込まれたりしてたのだろう。もしかしたら、ただ単に機嫌が悪かっただけなのかもしれない。
そう思いながら夜道を歩いてると、背後から声をかけられた。
「おい」
その声は、良く聞く声だった。
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