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14話:7月24日(日)①
翌日、僕は電車に乗っていた。
昨晩、父さんとの一件の後に渡された紙。あの紙を自分の部屋で見ると、そこにはとある住所が書かれていた。その住所は東京都内で電車で1時間もあれば行けるところだった。だから、昨日の勢いそのままにその住所に赴いている。
一応、母さんには内緒にしてきた。今日は友達と勉強しに行ってくると言っておいた。父さんを信じたわけではない。もしかしたら、父さんの罠かもしれない。行った先に仲間がいて袋叩きにあうのかもしれない。ただ、僕は真実が知りたいんだ。
電車を降りて15分。直射日光を全身に浴びながら住宅街を歩くと、古びているアパートに辿り着いた。紙にはこのアパートの一階の一室の住所が書かれている。
その扉の前に立つ。もし、知らない人が出てきたら何て言えばいいんだろう……。殺人鬼かもと思っていた父さんから渡された紙にこの住所が書かれてたから来た、なんて本当のことを言っても信じてもらえないだろうし……。もし父さんの味方が出てきたら……?昨日の一件で護身用スタンガンは壊れてしまった。最悪、一応持ってきたカッターナイフやはさみを使うことになるのかもしれない……。
そんなことを考え始めると、インターホンを鳴らすのが怖くなった。この扉の向こうにいる人物がとてつもなく得体の知れない恐怖の人物に思えてきた。不安がどんどん膨らんでいく。嫌な汗も出てくる。
「加代子? あんた加代子かい!?」
加代子? 母さんの名前だ。
僕は声のした後ろを振り向く。そこには車椅子に乗った皺くちゃのお婆さんと車椅子を押している少しやつれているお爺さんがいた。
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