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3話:7月21日(木)②
「ってことがあったんだよ!! ひどくない? すぐに風呂に入るなら僕が何見てても関係ないじゃんと思わない? きっと機嫌が悪かったんだ。それを僕にあたって!」
「じゃあ、見れなかったんだ」
「そうなんだよ。くそ……」
「それにしても意外ね。ヒョロヒョロのマサがお父さんに反抗するなんて」
「それは……父さんの言いつけを守っただけだよ。『正しいことをやり通す意志を持ち続けろ』を。僕は僕の言っていることの方が正しいと思ったから……」
「はいはい……警察官のお父さんの言いつけね」
咲は僕の長い話を、つまらない話を黙って聞いてくれていた。
「けどさ、もしかしたらお父さんがその事件に特に思い入れがあったんじゃないの? 例えば、その事件を担当して悔しい思いをしたとか、お父さんの知り合いがその事件の犠牲になっちゃたとか」
「いいや、あれは確実に八つ当たりだね。うん。間違いない」
「分からないよ。ほら、もしかしたら……」
咲は少し間を置いて言った。
「お父さんがその事件の犯人かもしれないじゃん」
咲が間を置いたので何を言うのかと思って少し身構えたのに。とんだ肩透かしだった。
「そんなわけないだろう!ありえないよ」
「けど、昔マサ言ってたじゃん。この電車の隣の人が殺人鬼かもしれないんでしょ。じゃあ、お父さんが殺人鬼っていう可能性もなきにしもあらずじゃない?」
「さすがにそれはないよ」
「じゃあ、そのテレビで流れてた事件を検索すればいいじゃん。事件名を覚えてたらだけど」
「その手があったか!」
「逆になんでこんな簡単な方法を思いつかないの!」
そんな話をしている間に最寄り駅に着いた。ちなみに、僕も咲も最寄り駅は同じだ。家も徒歩で5分もあれば着く距離にある。まあ、実際に行ったことはないんだけど。
「じゃあ、私こっちだから。」
「え?」
咲は家と反対方向を指さしてそう言った。
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