5話:7月21日(木)④

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5話:7月21日(木)④

「ふぅ~。」 自分の部屋に入り、ベッドに倒れ込む。特に疲れたわけでもない。ただのルーティンだ。いつもなら、すぐに着がえて宿題を終わらせるのだが、今日はポケットからスマホを取り出した。咲に言われた通り、昨日見た事件を検索するのだ。 ふとさっきの咲の赤い顔が浮かんだ。いつもと違う非日常感のせいだろうか。不覚にもドキッとしてしまった自分がいる。浮かんだ咲の顔を首を振ってかき消す。事件に調べる前に「体調は大丈夫?」とメッセージを一応送っておく。 さて、事件について調べようとしたところで咲からの返信が来た。秒で来た。「大丈夫だよ! ありがとう」良かった。じゃあ、ようやく事件を……と思ったところでまた咲からメッセージが来る。「26日……。大丈夫?」と書かれている。大丈夫だ。夏休みにこれと言った予定はない。そのように返信すると、また秒で返信が来た。「良かった!! 楽しみ」だそうだ。咲は僕と違って生まれた時からここに住んでるんだからそこまで楽しみにするものかと思ったが、僕は早く事件について調べたいので適当なスタンプを押して会話を終わらせる。 「何だったっけな……。昨日の事件名。確か……。連続幼児……毒殺……」  検索予測で出てきた。「連続幼児・児童毒殺事件」だ。試しに一番上にあるサイトのURLをクリックしてみた。  そこから一通り事件について調べた。被害者は事件名の通り、1歳から小学校低学年までの子どもたち。殺害方法は毒殺。この事件の特異なところは、一気に致死量の毒物を服用されたわけではないというところだ。複数回に分けられた例もあるという。被害者は大阪で4人、愛知で3人、東京で1人。被害者同士の共通点は無かったという。  この事件を調べていくにつれて、僕はだんだん怖くなった。この事件が起きた場所は全て僕が住んだことがある場所なのだ。僕は幼稚園から小学校低学年までは大阪に住んでいて、それから愛知の学校に転校、さらに愛知から東京に転校し、今に至る。警察官をしている親の都合だ。事件のあった詳しい日時について調べてみた。この事件の起きた場所は偶然僕が今までに住んでいた都道府県だ。けど、僕が住んでいた時に住んでいた場所で殺人事件があったとは限らない。 「はは……」  一致した。僕たちが大阪に住んでいる期間は大阪で事件が、愛知に住んでいる期間は愛知で事件が、東京に引っ越してきてすぐに東京で事件が起きている。そのうちの大坂の最初の2件は当時住んでいた家の近所で起きていた。  いやいや、住んでいる期間と事件が起きた場所と被ってるってだけで父さんが連続殺人犯……。いやいやそれはさすがに短絡的に結び付けすぎだと思う。けど、昨日の父さんの異常な様子……。 その時、咲の一言を思い出した。 「じゃあ、お父さんが殺人鬼っていう可能性もなきにしもあらずじゃない?」
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