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「あら、そうですか? そこまで言われるのでしたらお見せしましょう……」
すると彼女は、またもケロリとした顔ですんなり了承し、さっそく壁に縛りつけられた魔法剣の鎖を解き始める。
この特殊な環境に置かれているということもあるのだろうが、毎回、予想外の反応を返してくれるウオフェには、普段、冷静沈着なハーソンもなんだか妙に振り回されてしまう。
「ちなみに、この他にも水陸の区別なく走れる名馬〝アンヴァル〟や、行き先を告げれば勝手に向かってくれる〝静波号〟という船なんかもマナナーンの神宝としてこの島にあるんですよ? さ、神聖な神殿内でというのもなんですし、もっと気がねなく〝フラガラッハ〟が飛び回れる広い所へ場所を移しましょう」
調子を狂わされるハーソンにそんな説明を加えながら、どこから取り出したのか? 金色に輝く古めかしい鍵で鎖を繋ぎ留める南京錠を外すと、戒めを解かれた魔法剣を両の腕に携え、今度は屋外へとウオフェはハーソンを誘った。
「――しかし、聖ブランディンの伝説に云われる通り、ここは本当に楽園のような場所だな……地下世界というよりむしろ天国だ」
神殿の建物を出て、ウオフェについて隣接する未舗装の道を進む途中、ハーソンは周囲を見舞わして思わず呟く。
道の傍らには真っ赤に色づいた美味しそうなリンゴの生る果樹園が広がり、その向こうには立派な馬や豚が伸び伸びと戯れる緑の牧場に、黄金色の穂が風にたなびく麦畑なども覗うことができる。
また、耳をすませばどこか特から楽しげな音楽が聞こえてきていて、神殿内とはまた違う、深い森の中にいるかのような芳しい匂いも漂っている。
「あのリンゴも豚も麦も、いくら食べても自然とまた増えるんですよ。それに〝ゴブニュの饗宴〟と呼ばれる儀式で供される麦酒を飲んだ者には永遠の若さが授けられ、老いることも病気になることもけしてありません。ダナーンの神々が創ったこの〝マグ・メル〟の島は、確かに楽園と言えるかもしれませんね」
ハーソンの零した感嘆の言葉に、謙遜するでも照れ笑いを見せるでもなく、自身も心底そう思っているかのように、ウオフェも自慢げにそう答えてみせる。
「勝手に食料が増えるのか!? それもまた驚きだな……ん? 永遠の若さが授けられるということは、君は今、実際には何歳になるんだ?」
「女性に歳を尋ねるのは失礼ですよ? さあ、着きました。ここで〝フラガラッハ〟の力を披露いたしましょう」
今日何度目になるのか? 今度も驚かされるハーソンであるが、ふと抱いた疑問を思わず尋ねてしまうと、ウオフェはツンと澄ました顔でそう返し、誤魔化すかのようにして前方を杖の先で指し示した。
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