Ⅴ 暴れ馬の剣

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Ⅴ 暴れ馬の剣

「これは……!?」  見るとその神殿の裏側に当たる場所には、これまでの牧歌的な景色とはまったく様相の違う、この楽園にとっては極めて異質な光景が展開されていた。  広々とした荒野を思わす、土埃舞う、草の剥がれた茶色の地面の上、たくさんの男達が剣や盾を持って各々に斬り結んでいる……また、別の場所では並んで槍投げをしていたり、木の柱の的相手に投げ縄をしている者……集団でカエルのように飛び跳ねていたり、中には馬で曳く戦車を乗り回している者までいる。  いうなれば、軍事訓練場のような感じを受ける場所だ。 「ここは戦士達の教練場です。この島に住む戦士達は、日々、ここで闘うための業を磨いているのです」  目を見開くハーソンに、その喧騒に包まれた広場を見渡しながら、さらに歩を進めてウオフェは答える。 「教練場? ……なんだか妙だな。このような楽園にそんな無粋なものが必要なのか? 俺の眼には不必要に思えるんだが……」  眉間に皺を寄せ、異質なその空間を眺めながら、ハーソンは独り言を言うように呟く。 「たとえ楽園であっても、脅威というものは存在するんですのよ……さ、あちらの的で実践してみせましょう」  だが、ウオフェは意味深な台詞を口にしただけで、そのまま足を止めずに教練場の敷地内へと入って行った。 「……あ! これはウオフェ先生、おつかれさまです!」 「ウオフェ先生、こんにちは!」  不意に現れた彼女の姿を見ると、古代北エウロパの戦士のような恰好をしたチュニック姿の男達は、軒並み動きを止めるとウオフェに対して丁寧な挨拶をする。 「先生? ……もしかして、君はこの教練場の教師なのか?」  男達のそうした態度とこの状況を鑑みた結果、ハーソンはそんな推論へと考え到る。
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