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「これが、魔法剣の力か……」
「フラガラッハ! もうけっこうです。鞘にお戻りなさい!」
その常識では考えられない現象を唖然と見つめるハーソンの傍ら、ウオフェは天に鞘を掲げて再び魔法剣にそう命じる。
「……フラガラッハ? もう! 相変わらずのじゃじゃ馬なんだから!」
ところが、今度はそれに従う様子をまるで見せず、なおもくるくるとひとりでに回転しながら宙を乱舞すると、残った木の柱を切り刻んだり、地面を走ってもうもうと砂埃を巻き上げたりしている。
生徒達が逃げ出したのはこうなることを充分に理解していて、それに巻き込まれないためだったのだろう。
「まったく困った子ね……ΘΔΦΣΩΨμδЖ∀…」
それを見たウオフェは美しい眉を「ハ」の字にすると、ハーソンには聞き取れない、おそらくは彼女達ダナーン人の言語と思われる呪文を小声でぼそぼそと唱え始めた。
「今一度、偉大なる海の神、マナナーン・マク・リールの名において命じます! マナナーンの生み出したる魔法剣フラガラッハ! マナナーンの代弁者たる我、ウオフェの声に従い、おとなしくこの鞘に戻りなさい!」
そして、先程よりも声を強めると、暴走する魔法剣に対して改めて帰還の命令を発する。
「ふぅ……なんとか聞いてくれたみたいね……」
すると、先程の呪文が効いたのか? 不意に魔法剣はその動きをぴたりと止め、一拍の後、またくるくる回転し始めたかと思いきや、どこか渋々戻ってくるような空気を醸し出しながら、ウオフェの手に持つ鞘の中へすらりと納まった。
「どうです? ご覧になったご感想は?」
少々暴れはしたものの、さほどの被害もなく無事に魔法剣を手元に戻すと、振り返ったウオフェは悪戯っ子のような微笑みを湛えてハーソンに尋ねた。
「……い、いやあ、恐れ入った。あれこれ想像はしていたが、噂に聞くダナーン人の魔法剣、まさかこれほどのものだったとは……」
不意に訊かれ、呆然と佇んでいたハーソンは、一瞬遅れて譫言のようにそう答える。
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