Ⅵ 魔法剣の心

2/7
前へ
/55ページ
次へ
「……うおっ! ……くっ……!」  刹那、身を屈めてなんとか斬られずにはすんだものの、飛んで行った魔法剣はくるりと空中で方向転換すると、再びハーソンに斬りつけて来て、彼は慌てて飛び退けて九死に一生を得る。 「や、やっぱり盾も貸してくれ! なるべく頑丈なやつをだ!」  実際に手合わせしてみて、改めてその魔法剣の持つ力を認識したハーソンは、前言撤回して盾もウオフェに求めた。 「――くっ…! ……ふんっ…! ……うおっ…!」  そうして、兜と鎖帷子に加えて盾も装備したハーソンの、魔法剣〝フラガラッハ〟との決闘……というより、稽古をつけてもらっているような剣戟はなおも続く……。  楽園のようなマグ・メルのドーム内に響き渡る、金属と金属が激しくぶつかり合う甲高い衝撃音……盾を装備したこともあるが、最初は逃げ回ることしかできなかったハーソンも、次第に盾で斬撃を受けとめたり、剣で斬り結んだりすることもできるようになってきた。  ちなみにその金属板の張られた頑丈な円形盾(ラウンドシールド)も、〝フラガラッハ〟同様、ダナーンの魔術で造られた魔法の武具である。一方の兜と鎖帷子はそうしたものの用意がないらしく、極めて一般的なものだ。 「さて、今日はこれくらいにしておきましょうか……フラガラッハ! 鞘にお戻りなさい! フラガラッハ! んもう、またあ……フラガラッハ! マナナーン・マク・リールの名において命じます…」  そんな激しい攻防をハーソンが疲れ果てるまで続けた後、なおも自由に飛び回る魔法剣をウオフェは強制的にまた魔術で鞘へと戻す。 「今夜は神殿の診療所にお泊りください。傷の手当ても必要なようですしね」 「……ハァ……ハァ……あ、ああ、すまない……そうさせてもらえればありがたい……」  そして、もう立つこともままならず、肩で息をしながら地に膝を突くハーソンに手を差し伸べると、彼を引き起こして再び神殿の方へと誘っていった。  さすがに何度かは防御に失敗し、鎖帷子のおかげで両断はされなかったものの、あちこち軽い切り傷や打ち身でいっぱいである。見れば鎖帷子の方も、代わりに斬られてボロボロになっている。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加