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「おお、その話か! 私は前に聞いたことあるが、それだけでもなかなかの大冒険談だぞ? 例えるなら異界にでも迷い込んだかのような、まさに騎士物語の如き冒険活劇だ」
すると、ふいにアウグストが剣から視線を上げ、パッと顔を明るくすると自分のことのようにそう答えた。
「いや、そこまで大それたものでもないが、確かに夢とも現ともとれぬ不思議な体験ではあったな……そういえば、まだメデイアには話したことなかったか……」
アウグストの言葉に、ちょっと照れ臭そうに否定してみせるハーソンであるが、どうやら自分でもそう感じている様子で、その時のことを懐かしむかのように遠い眼で虚空を見つめている。
「長い船旅でちょうど退屈していたところです。せっかくの機会ですし、お茶のおともに話してやってはいかがですかな? 私も久々にお聞きしたい」
そんなハーソンに、実際、一月以上もかかる新天地への旅程で時間を有り余らせていたアウグストが、メデイアの助け舟になるようなことを図らずも言ってくれる。
「はい! ぜひぜひ、お聞かせください!」
すかさずそれにメデイアも乗っかり、好機とばかりにさらにたたみかける。
「……そうだな、我らが騎士団の魔術担当として、あの出来事は聞いておいても損はないかもしれんな……よし。では、ゆっくりお茶でも飲みながら、昔話にお付き合いいただくとするか」
二人にせがまれ、その頃の記憶が蘇ってきたのか? ハーソンもまんざらではない様子で魔法剣〝フラガラッハ〟発見にまつわる物語を静かに語り始めた。
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