Ⅱ 遺跡の島

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「となると、上に何か祭祀跡みたいなものがあるかもしれないな……よし。登ってみよう!」 「へい! 頂上にお宝でも置いてありゃあいいっすね!」  船の停留作業が終わると、ハーソンはティヴイアスに声をかけ、けっこう乗り気な彼とともに、そのなだらかな石の墳丘を登り始めた。  築かれてからずいぶんと長い年月が経っているのだろう……遠目に見た時の通り、石の隙間からは青々とした草木が生い茂っているが、それでも登頂を阻むほどのものではなく、傾斜も緩いために比較的容易に上ることがきる。 「伝説とかでありがちなパターンだと、丘の頂上に魔法剣が刺さってたりするかもしれませんぜ? で、そいつを抜けた者は王様になれるとか?」 「フン。騎士道物語(ロマンス)の読み過ぎだな……ん? 剣の代わりに石碑があるようだぞ?」  そんな無駄話をしている間にも、二人は墳丘の頂上へと到る……下からではわからなかったが、見れば人の背丈ほどもある大きな石の板がそこにはそびえ立っている。 「墓碑か、あるいはダナーン人の信仰の対象だったんだろうか? その割には他に何もないようだが……いや、これは土器の欠片だな。お供えだろうか?」  小屋が一軒建つくらいの広さはある、その幾分平らになっている頂の中央まで歩を進ると、ハーソンはその石板を調べ始める。  表面はすっかり苔生しており、カビのためなのかもとからの色なのか? 暗緑色をした扁平な石でできているように見える。  その石の他に建造物は何もないが、足元を見ると素焼きの壺か椀のようなものの破片が風化して散乱している。 「何か文字が書いてあるようだが……読めんな。なんらかの魔術的なものか?」  表面の苔をハーソンが手で除いて見ると、古代によく見られる渦巻き模様の他、何かの図形のような幾何学模様や、見たとのない文字なんかも刻み込まれている。 「俺もこんな文字みたことないですねえ。デーンラントのものでもねえ」  ハーソンの背後からそれをまじまじと見つめ、ティヴィアスもそんな感想を口にする。
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