Ⅱ 遺跡の島

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「裏にも同様の模様があるようだな……まるで別物だが、魔導書の召喚魔術で使われる魔法円や印章(シジル)に似た印象を受けなくもない。もしや、墓泥棒から護るための結界を張る装置か?」  その石碑をぐるりと一周し、反対側も調べたハーソンンはそんな推論に思い至った。 「これがこの遺跡を秘密のベールに包んでいるというわけだ……このペンタクルが本物なら、その秘密をぜひとも俺の前に開示してほしいものだな」  その推論をもとに、本気とも冗談ともとれぬ口調でそう呟くと、例の悪魔の力が宿っているという金属円盤を取り出し、ハーソンはそれを石碑の方に掲げてみせる。 「もしかしたら、そいつの力で封印が解けて、秘密の扉が開くかもしれませんぜ? ガハハハ…」  するとティヴィアスもノリよく彼の言動に合わせ、そんなことを言って笑い声をあげる。  ……だが、その時だった。 「うわっ! な、なんだ!? ま、まさかほんとに……」 「地震か!?」  突然、ゴゴゴゴゴ…と重低音の地鳴りが周囲の空気を震わせたかと思うと、空気ばかりか自分達の立つ墳丘までが激しく鳴動し始めたのである。 「いかん! 石を積んで築いたものなら崩れやすいかもしれん! すぐに船へ戻るぞ!」 「が、がってんでさあ!」  これまでの冒険で培った勘が危険を察知し、ハーソンは咄嗟にそう判断すると、テイヴィアスを促して急いで墳丘を下りようとする……が、時すでに遅しである。 「…!? うわあっ…!」 「なぬ…!?」  次の瞬間、まるで落雷したかのような轟音とともに石の地面が崩れたかと思うと、それまで平坦だった墳丘の頂には、大きな漆黒の穴がポッカリと口を開けたのである。 「うおぉぉぉぉぉぉ~っ…!」  一瞬にして足下の地面がなくなったのだから、鳥のように空でも飛ばない限り、最早、彼らに逃れる術はない……二人はそのまま、突如現れた地下空洞の暗闇の中へと絶叫とともに落ちていった……。
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