短編

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その夜、僕は疲れていたのか部屋に入るとすぐさまワイシャツも脱がず布団へ倒れ込んで眠ってしまっていた。 それから何時間たったのか、意識が浮上してきた頃はまだ部屋も暗く朝は迎えてない様子で何処かほっとしてた。すると、 ─ドンドンドンドンッ 周りにも聞こえてるんじゃないか、という程の勢いでドアが叩かれている。だが何故か体が動かない。焦った僕はどうにか出来ないかと色々と試し、真っ暗な部屋の中で目線だけが動く事に気付いた。まさかこれ金縛りじゃないのか、その思考に至る中先程よりも激しくドアが叩かれ始める。 ─ドンドンドンドンドンッ!! 僕は今まで心霊体験というものをしたことがない、けれど友人たちからは良くそういう怖い話を聞いていた。つまり、今ドアを叩いているのは……そう自覚すると今まで冷静だった内心までもが凍るほど、怖くなってきた。 ─ドンドンドンドンドンッ! やめろ、やめろ、やめろ、やめろ。内心そう何度も何度も呟き、鬼気迫るような音に身を震わせながら目をぎゅっと瞑った。そして怖さからか、いつの間にかまた眠ってしまっていた。 朝方目が覚めてすぐさま確認しみても、ドアには叩かれた痕跡もこじ開けようとした様子もなく、何だか気持ち悪いまま仕事へ向かった。 「お疲れ様でした、お先に失礼します」 話し合う声と電話が鳴り止まない社内では僕の声など聞こえていないようで、これ以上残業に捕まる事は避けたかった為そっと退社した。最近仕事の疲れで良く眠れず、音や光が気になって押し入れで眠ることさえあった。食欲も落ちる一方だ、コンビニ飯卒業も検討しなければ。 そして帰り道過ぎるのは昨日えらい目にあったことだ、今夜は大丈夫だろうか。仕事中もそればかり考えてしまっていた。
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