短編

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気分が重い中やっと家に着くと、103号室と104号室の前で誰かが話をしていた。きっと部屋の住人何だろう、そう思ったが声はかけず軽く会釈だけして部屋に入った。 「部屋…さすがに片付けないとな」 溜まった洗い物や床に散乱するペットボトル、干したままの服と締め切ったカーテン。これは本当にやばい、掃除をしなければ。ふとカレンダーに書かれたシフトを見ればちょうど明後日は休みだ、そこで片付けよう。 そう決心するや否や布団に倒れ込んだ、本当に今日も疲れた。部屋の汚さに気を取られた僕は昨日の事を忘れてまた眠ってしまった。 ─?ぼそぼそとした女の人の声がする。 何だろう、そう思って起きた。その瞬間昨日の出来事が頭を過ぎり体が強ばった。 ─ガチャガチャガチャガチャ! 開けようと何度もドアノブを動かす音が聞こえる。恐ろしくなった僕は慌てて起き上がり咄嗟に押し入れへと身を隠した。今日は体も動くあとは昨日のように音が鳴り止むのを待って、そう思っていた。 ─ガチャリ、 え、なんで、そう思った。その瞬間指先まで瞬時に強ばった。怖い、それで頭がいっぱいになった。確実に鍵を締めたはずのドアが開いた音だ、僕は必死に息を殺して耳を済ませる。見つかったらどうなるんだ、何が部屋に入り込んだのか、そんな考えたくもない思考で埋め尽くされ体がガタガタと震えた。 ─がさ、がさ、がさ、 ゆっくりと部屋を歩くような、擦るような音が聞こえてくる。すると微かな女性の声が消えた、この声には聞き覚えがあった。その声は隣の102号室の女性のものだ。まさか、昨日のドアを叩いていたのも彼女なのか?すると彼女は…… ─バタン 突然ドアが閉まる音が聞こえた、極度の緊張から解放されほっとしながら目を閉じた。僕が居なくて諦めて帰ったのか。もしかしたら彼女はもうこの世に存在していないのか、僕はその彼女に話しかけてしまったのか、もしくはストーカーか何かなのか、纏まらない考えのまま意識が遠のいていった。
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