短編

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あれから何時間が経ったんだろう。 体が重い。充電に繋いだままのスマホがチカチカと光るのが見える、仕事を無断欠勤してしまったからきっと職場からの連絡だろう。ゆっくりと体を起こすとカーテンの隙間から入る赤い光に目を細めた、そろそろ夕方なのか。 気分転換にコンビニにでも行こう、そう思って部屋を出た。すると、それを見計らったように102号室の女性がドアの横に立っていた。僕は思わず息を呑み、棒立ちになる。 「あ、あんた、なんなんだ…やめてくれよ」 自分でも分かるほどの情けないか細い声が零れ出た。眉を寄せてぐっと険しい顔でこちらを見る女性に、僕は怖くなりよろけながらもドアへ背を預けた。まさか僕は呪われているのか、この人に殺されるんじゃないか、ぐるぐると内心が渦巻く最中彼女は未だ微動だにしない。ふと、女性は薄い唇を開けた。 「……それはこっちのセリフですよ、もしかして………あなた……」 「なんだよ、僕は何もしてないだろ!恨まれる覚えもない、あんたとはこの前会ったのが初めてで、けど、なんで、あんな…」 「あなた……やっぱり、そうなんですね」 女性の険しかった表情は突然和らぎそしてゆっくりと俯いた、その声はだんだんと小さくなる。何処か納得した雰囲気の女性とは裏腹に僕は何も分からない、けれどこの女性が幽霊やお化けだとかという感じはしない気がした。 「…良いですか、ちゃんと部屋で自分と向き合ってください。そうすれば分かります、あなたが恐れてるものも全部」 「は?…あんたじゃないのか?何か知ってるなら頼む、教えてくれ、怖くて仕方ないんだ、色々な事が最近起こって…」 「大丈夫です、大丈夫、落ち着いて」 「落ち着いてなんて居られるか!」 僕は声を荒らげて部屋に戻った。全く持って理解出来ない、けれど一つ分かったのは隣人は幽霊では無いかもしれない。そして気になる事を言っていた、部屋で自分と向き合えと。
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