短編

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正直、訳が分からない。もし隣人の女性が原因ではないとすると、他には何も思い当たらない。突然夜中にドアを叩かれたり、部屋に入って来られたり。そこまで思い返して僕はある事に気付く。 これら全ての出来事が、僕が部屋に居る時に限って起こっているという事に。 僕は都会へ引越してから周りとの交流が極端に減った、同僚とも会社以外での交流はなく実家の家族とは月に何度か連絡を取るくらいだ。だからこそ、隣人の女性がストーカーか何かでは?と疑ってしまった。 そして先程、隣人の女性が言っていた部屋で自分と向き合え、という意味を足して考えると…… 「まさか……僕に霊が取り憑いて、いるのか?それともこの部屋がいわくつき、だとか」 ばっ、と部屋を見回した。めくり忘れたカレンダー、散らかった部屋、ぼろぼろのカーテン、敷いたままの布団、どれも見慣れたもので何も問題はない。今思い返してみれば数日前、突然電気が点滅を繰り返したり物が落ちたりしていた、けれどそれらは偶然の事だろうと全く気にもしていなかった。まさかあれはポルターガイストの一種で、そう思ったその瞬間。 ─ガタンッ 押し入れの中から音がした。 明らかにおかしい。僕以外居ないはずのこの部屋で、しかも誰も触れていない押し入れの中から音がするなんて。僕は恐怖と怒りが入り交じりながら叫んだ。 「…い、いい加減にしろよ!!僕が何したって言うんだ!!」 ぱしんっ。突然ラップ音が部屋で鳴り始め、部屋の電気が点滅を激しく繰り返す。その異様な光景に部屋を出ようとドアノブを回す。開かない。ガチャガチャと何度もドアノブを回すが開かない、当然鍵などしていないのに。 「頼む、誰かー!誰か開けてくれ、助けてー!」 必死に大声で叫びながら誰か気付いてはくれないかとドアを何度も叩く。そして次の瞬間、僕は凍り付く。 ─ガタガタ 押し入れから、何かが出て来ようとしている。
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