短編

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何を思ったのか僕は押し入れへと走った。 今思えばこの時の僕は、何故自分がこんな目に合わなければいけないのかという理不尽に怒りを覚えいたんだと思う。 「いい加減にしてくれよ!!!」 ガタガタと揺れる押し入れの扉へ手をかけると、思いっきりその扉を開け放った。 「うわぁあああああああぁ」 煙のように中から虫が飛び出してくる。そして肉が腐る悪臭、半白骨化し始めたスーツ姿の遺体が膝を曲げて座りこちらに手を伸ばすような形でそこにあった。 へたり混むようにその場で膝をつき、全ての表情が抜け落ちたような顔で笑い僕は呟いた。 「……ああ、霊は僕か」 ──本日未明、とあるアパートの住人から「隣から叫び声が聞こえた」という通報があり現場へ到着すると部屋の押し入れから、白骨化した遺体が発見されました。遺体はその部屋に住む会社員の男性で、検死の結果死因は過労によるもので死後三週間ほど経過しているとの事で。また三週間程前から会社を無断欠勤し行方が分からず、捜索願が出されていたようで…… このアパートは今でも存在し、僕の遺体が見つかった部屋はリフォームされ押し入れ部分は部屋の一部となったようです。 僕は今でもそこに存在し続けています。
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