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短編
これは僕の身に起きた怖い話です。
大学を卒業して就職のために都会へと引っ越してきた僕。
最初に三ヶ月住んでいた場所は、駅は遠いものの周りの環境も良く随分と気にいっていたのだが築年数の古さから取り壊しが決まり、渋々新しい住居を探すことに。
けれど、その住居探しは前回の仲介業者を利用した事によって難航することなく終わる。
駅チカ徒歩六分、二階建てのアパートで全八室だが二階は改装工事中。僕は空いていた一階の101号室に入居することになった。
部屋は改装済みの為、とても綺麗で使い易く荷解きは難なく終わり会社から貰った休み一日分を得した気持ちで過ごしていた。
それから一ヶ月、会社が繁忙期に入り新入社員の僕ですら休みも返上し、毎日残業がついて回る程の忙しさを迎えていた。
疲れた足取りで家に帰ると、珍しく隣の102号室に住む人と鉢合わせた。
「……こんばんは」
「あ、こんばんは」
引越した際に近所への挨拶回りをする、という習慣が無かった僕はこの時初めて隣人と会った。
色褪せた水色のワンピースを着た髪の長い華奢な女性だった、日が暮れた後でも分かるほど肌が白く、声に含まれる冷たさを感じ何処と無く怖いなと感じた。
ドアが閉まるまで決して視線は合うことが無かったが、きっとコミュニケーションが得意ではないんだろう。その時はそう思っていた。
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