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『……ぼくの結婚相手は、ぼくが物心つく頃にはとっくに決まっていた。大学の卒業から五年後という約束だった』
鍋食べたいな。でもめんどくさい。
でも作んなきゃ。一人暮らしだし。
『三年前に。きみから告白を受けたのは、本当に嬉しかった。
そのことだけは、……信じて欲しい』
頭なんか下げられたって、知らないっつの。
嘘も方便嘘も方便。
あーあ。今頃、高級フレンチを食べているはずだったのになあ。
とことん負け組なわたし。
とことん勘違い女なわたし。
『分かりました。いままで、ありがとうございました。
一条(いちじょう)先輩と過ごした日々はわたしの宝物です。
末永く、お幸せに』
『待てよ。……出るのか』
憎しみも悲しみも彼のこころに残したくない。
にっこりと笑って店を去ったのはわたしに残された最後のプライドだった。
それでまあ。現在。自宅最寄り駅スグのちょっとお高めのスーパーにて。
ドリンクコーナーで牛乳の一リットルのパックをIN。明日の朝はシリアルを食べよう。ということはシリアルコーナーシリアルコーナー……
角を曲がったところで、あっ、と叫びそうになった。
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