◇3

17/19
前へ
/400ページ
次へ
 胸だけをこんなに愛撫されるのは初めてのとき――いや。初めてのときもここまでされなかったくらいで、よって、これ以上されると、本格的にまずい。  そんな判断が働いたときだった。  けいちゃんが、動きを止めた。  そして、わたしの胸に頬を預け、 「……これ以上おれなんもしないから。このまま、寝かせて……」  じくじくとした感情を持て余したまま。  わたしは、頷いて、けいちゃんの背中に手を回した。  あのときのけいちゃんにいったいなにがあったのか、わたしは知らない。  朝の弱いわたしは、やはり、けいちゃんよりも遅く起きてしまい。  翌朝、テーブルのうえにメモが残されていた。 『悪かった。さきに会社行くから』  いつも、残される側なのだ、わたしは。  そしてそれ以降、わたしたちが男と女に戻ることは一切ないのだが。  つまりは。総合すると、けいちゃんは、わたしが大学一年の頃からわたしのことを好きだったわけで。  彼は、わたしが一条先輩に長らく片想いをしていたのを知っている。  知っていて応援してくれていたわけだ。
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3434人が本棚に入れています
本棚に追加