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序章
誠に正義感の強い豪傑な男であった。
丈は6尺(180センチ)、顔には太い眉に立派な武者髭。恰幅が良く鎧兜がしっくりと似合ってしまう。
その名を平将門という。
桓武天皇も罪な人であった。たくさんの王位継承者を産むものの、皇位を継ぐ親王のほかは普通に名前に王が付くだけで、官位もそこそこ。
当時は天皇と婚姻関係で結びついた藤原氏が権勢を誇っており、京の都の政治をほぼ独占し貴族となって出世していった。
将門は桓武天皇から5代続く王位継承者だが、あまたいるこのような「王」に出世の道はないに等しかった。そういうわけで将門は都の清涼殿を警備する「滝口の武士」として薄給を得ていたにすぎない。
将門はそんな都の政治の体たらくには嫌気がさしていた。また都の貴族になれなくて全国の農民からコメを出させる国司や郡司の横暴な振る舞いにも怒りを感じていた。
将門は検非違使という警察官のようなものになれると思ったがそれもかなわずと知るや、故郷である関東の下総郡猿島に帰ることにした。
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