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息子の書いた絵日記に、
奇妙な少年が現れたのは
8月の半ばからでした。
真っ白なシャツに白い肌。
猫のような眼をした少年は、
毎日かかさずこの病室に、
遊びに来ていたようでした。
わたしは気づきませんでした。
小学校の宿題は、
勉強に遅れが出ないようにと、
チェックしていたはずなのに。
きっと隠していたのでしょう。
世間はすっかり夏休みでも、
長い闘病生活を送る息子に楽しみなどありません。
毎日毎日リハビリばかり、
書くことなんて何もないのに、
「夏の思い出を残せ」だなんて。
思えば酷い話です。
まじめな息子は悩んだ挙げ句、
嘘を書くことにしたのでしょう。
……もう少し早く見つけていれば、
未然に防げたかもしれないと、
悔やんでも悔やみきれません。
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