廃プールと海とガラスとガラス

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 茫洋とした白い闇の中に、波の音が響いている。  海が近いようだった。 「ただいま。またきちゃった」  後ろから彼女にそう声を掛けられ、彼は振り向いた。  そして歓声を上げながら、彼女を抱きしめる。  いつの間にこんなに好きになったのだろう。 「会いたかったです。あなたが誰でも、誰でもなくても、俺は――」  その後を、なんと続ければいいだろう。  ほんの刹那、それを考えた時。  暑さの中で、彼は目を覚ました。  昼日中(ひるひなか)の自分の部屋の畳の上、タオルケットを腹にかけている。  体ごと横を向いて午睡していたせいで、下側にした右目から、涙がこぼれた。  セミの声が響いている。  部屋の中には他に誰もいない。  夏休みが今日、終わろうとしていた。
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