出会い

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出会い

 ずっとこの神社で過ごしている間、色んな参拝客を〈僕〉は目にしてきた。  決まって、この神社に来る人間は皆一様に暗い顔、或いは怒りに満ちた顔をしていた。  何かに追い縋るように切羽詰まった顔をした人間。  大粒の涙を流しながら顔をぐちゃぐちゃにした人間。  眉を下げ、しかしその瞳には静かな怒りの火を確かに灯した顔をした人間。  どんな人間からも怒りや悲しみ、そう言った負の感情だけが感じ取れた。  だから〈僕〉の目にその少女は異質の存在のように映ったのだ。  賽銭箱前で小さく微笑むその少女の姿は今までのどの参拝客とも違っていて、その瞳の奥に確かに小さな怒りが存在しているはずなのにそれを必死に押し殺して笑みを浮かべている、その少女を見た瞬間、興味が湧いた。  そうして同時に思ったのだこの少女にならば神様にもはぐらかされたココ最近ずっと不思議に思っていた疑問が解決できるかもしれない、いや、きっとできる、と。  そう思ってしまったらいつものように気配を押し殺すなんてことはせず、〈僕〉は、わざと音を立てて少女の後ろへと姿を現した。  突然の物音に肩を小さく揺らし、恐る恐る振り返った少女と〈僕〉の視線が絡まる。  その瞬間、微かに揺れ動いた少女の瞳を綺麗だなんて、何とはなしに〈僕〉は感じた。  それが少女と〈僕〉の出会いであった。
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