エピローグ

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エピローグ

エピローグ  カンプ・ノウは超満員だった。そびえ立つスタンドからは、引っ切りなしに声援が飛んできている。  二〇一〇年十月二日、神白たちバルサのスタメンは、コートの中で円陣を組んでいた。 「監督の言ったとおり、オルフィノのマークはきっちりやろう。ルアレの豪華攻撃陣の中でも、何をしてくるか読めなくて一番怖い」  腕にキャプテン・マークを付けたレオンが、真面目な調子で力説した。正キャプテンが怪我で欠場しているため、この試合に限ってはレオンがキャプテンだった。 「それから今日は、イツキのデビュー戦だ。俺も鮮明に覚えているけど、やはり初めてのトップの試合に臨む緊張感は強い。だからしっかり声を出して、イツキをもり立てていこう」  レオンの口調は力感が溢れているが、同時に暖かみもあった。神白は面映い心持ちで「ありがとう」と返す。  フベニールAでのルアレの決戦の後、神白は順調に上位カテゴリーへと上がっていった。トップへの昇格は一ヶ月前であり、ようやくの初出場が今日だった。  レオンが「行くぞ(vamos)!」と轟く声で叫んだ。神白らは「おう(si)!」と声を張り上げる。  円陣を終えて、神白はゴールへとダッシュしていった。到着して振り返ると、皆、すでに配置に就いていた。神白は両足ジャンプをしつつ、集中を高めていく。 (神白君)エレナの澄んだ声が聞こえた。はっとして神白は辺りを見回す。するとゴールの端に、半透明のエレナの姿があった。ポストに寄りかかり、もの柔らかな笑みを神白に向けている。 「エレナ──!」驚愕した神白が声を掛けようとすると、エレナはすっと消失した。神白は不思議な思いに捉われかけるが、すぐに前を向いた。小さく深呼吸して試合に没入する。 (君のおかげで、俺はここまで来れたよ。後はどこまでも上っていくだけだ。バロンドールの高みまで)  神白は万感の思いを込めて、エレナに語りかけた。すぐに、ピーッ! ホイッスルが鳴り、ルアレの7番がボールを蹴った。
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