一、寮長と副寮長

9/18

466人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
「本当だ、俺達事あるごとに言い争いしてたよな?」 「そうそう! 偉そうな事言うな! 俺に構うな! って慧に突っかかる感じでさ」 「何回謙太が慌てて後を追ってたか」 「えー⁉︎」  慧と謙太は水を得た魚のように、意地悪く口角を上げてみせる。 「咲希にもバチバチだったよね?」 「うん。結構冷たく接されて、嫌われてると思ってた」 「もう時効にしてくれよ……」  咲希まで二人に乗っかると、博は目に見えて肩を落とした。  思い出すのはもう六年も前。最初は全然意見が合わなくて、衝突ばかりだった。咲希自身、嫌われてると思ったし、普通科とのジュエルゲームでは博を疑った。  それが今では笑い話なんだから不思議だ。 「何が原因でそんなに仲が悪かったんですか……?」 「あー……」  宏太の問いかけに、博は静かに箸を置いた。羞恥で染まる顔を隠すように、額に手を添えて話し出す。 「学園に入る前は地元で神童なんて言われてたんだよ。勉強はずっと一番だしラジコンレースでも優勝するし、スポーツもまあまあできるし。なのに学園入ったら俺より出来がいいのがいるわ、咲希にはテストでは勝てるのにランクで負けるわでさ。それを認めたくなくて荒れてたんだよ」 「でも、今は仲いいですよね⁉︎」  今度は眞子だ。心配そうな眞子に、健司が優しく笑いかける。 「おーおー! 安心しろって! 慧とはお互いツーカーだし、咲希には俺に次ぐお兄ちゃん対応だからさ!」 「ですよね! 良かった!」
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

466人が本棚に入れています
本棚に追加