一、寮長と副寮長

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 春休みの最後に行われるのは、新入生のランク分けテストだ。 「どう?」 「ちょっと待ってね……」  サイトにはAランク以上しか載らないけれど、全員の名前があると信じて発表と同時にパソコンを開く。すると。 【Sランク 真矢コウキ】  一番最初に先端技術科の新入生の名前があった。そして、その下には他の三人の名前もある。 【Aランク 藤峰歌  Aランク 川北正  Aランク 杉野隆二郎】  今年の高ランクはSランク一人にAランク十人。その中で、先端技術科の新入生全員の名前があるのは上々の出来だ。 「全員高ランク! Sランク一人にAランク三人!」 「お!」 「良かった! Sランク誰だ?」 「真矢コウキ君。ほら、ダンススクールにずっと通ってるっていう子です!」 「すごいですね!」  咲希が叫ぶと、談話室は一気に明るい雰囲気に包まれた。  新入生達はそれからすぐに帰ってきた。 「おかえり! 皆おめでとう!」  笑顔で出迎えれば。 「ありがとうございます!」 「良かったです!」 「まだ信じられないですけど」  男子三人からは喜びの声が返ってくる。でも。 「歌もおめでとう」 「……どうも」  歌だけは浮かない表情。 「そろそろ他の寮生も帰って来るから、今夜は皆の歓迎会兼お祝いでご馳走だから楽しみにしててね」 「やった!」 「ご馳走だっ!」 「本当に豪華だからお腹空かせててね」 「……わかりました。夕食の時間に食堂に下ります」  他の同級生が豪華な食事にはしゃぐ中、談話室に寄る事もなく部屋へと戻っていってしまった。
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