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車はそのまま咲希達から見える位置で停まった。
最初に出てきた男性は、すぐには誰かわからなかった。すらりとした長身に、色素の薄い髪。着ているスーツは遠目からでもいい物とわかる。
その後を追うように、もう一人男性が降りてくる。最初に出てきた男性と雰囲気は似ているけれど、髪は黒く、そして眼鏡をかけている。
どれだけ会ってなくても、見間違えるわけがない。
あれは。あの二人は。
「一樹……」
「え⁉︎」
間違いない。ずっと行方すらわからなかった一番上の兄・一樹と、何で一緒にいるかはわからないけれど、元普通科寮長・城之内秀樹だ。
二人は間違いなくこちらを見て、目が合った。だけどふと微笑んだだけで、校舎の方へ歩いて行ってしまう。
「慧、皆の事お願いしていい?」
「ああ。荷物も置いてけ」
「咲希先輩?」
「ごめん、ちょっと行ってくる」
もう居てもたってもいられなかった。
店を飛び出して二人を追いかける。
「一樹! 一樹、待ってよ!」
二人にはすぐに追いついた。
ショップ街の外れで振り返った一樹は、当たり前だけど大人っぽくなった。だけど咲希にだけ向ける笑顔は変わらない。
「一樹!」
「良かった。気づいてくれなかったらどうしようかと思ったんだ」
「気づかないわけないじゃん!」
あまりに笑顔が優しくて、言いたい事はたくさんあるのに言葉が出てこない。まるで二年前の再会なんてなかったみたいだ。
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