一、寮長と副寮長

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「今言った通り、一樹が保険の先生で、城之内先輩が私達のクラスの担任になるんだって」 「何が目的で?」 「わかんない」 「あの人達が意味のない事するわけないだろ」 「それは私もそう思う。でも聞いても何も答えてくれなかった」 「そうか……」  慧はそれきり言葉を切った。  兄弟なのに何も知らない。何も答えてもらえない。無力感でいっぱいになる。  咲希がそっと体を傾けると、頭が少し高い肩に触れた。 「……一樹が何を考えてるのか全然わからなかった。でもあれだけ仲の悪かった二人が一緒に帰ってきて、何もないわけない」 「ああ。絶対何かある」 「どうする?」 「寮生には気を引き締めるように言おう。これまで以上にランク、成績、言動に気を配れって」 「うん。……嫌な予感がする」  肩にもたれたまま言うと、耳元で小さな笑いが溢れた。 「何?」 「いや、巻き込まれ体質のお前が言うんだから間違いないと思ってな」 「笑い事じゃないんだけど」 「知ってる」  少しムッとしてみても、慧の態度は変わらない。それがおかしくて、変に入っていた力が抜けた。 「とりあえず、城之内先輩のクラスになる俺らは気を抜かない方がいい。何かされる隙を与えないようにしながら様子を見よう」 「うん。謙太にも連絡するね」 「ああ」  思い出すのは1年生の時の事。あの頃は姫以外の寮長・副寮長は皆怖いイメージしかなくて、特に城之内先輩は何を考えているかわからなかった。最後にあんなメールまで。 「何もありませんように」  今までを考えれば叶わないとは思いつつ、呟かずにはいられなかった。
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