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「今言った通り、一樹が保険の先生で、城之内先輩が私達のクラスの担任になるんだって」
「何が目的で?」
「わかんない」
「あの人達が意味のない事するわけないだろ」
「それは私もそう思う。でも聞いても何も答えてくれなかった」
「そうか……」
慧はそれきり言葉を切った。
兄弟なのに何も知らない。何も答えてもらえない。無力感でいっぱいになる。
咲希がそっと体を傾けると、頭が少し高い肩に触れた。
「……一樹が何を考えてるのか全然わからなかった。でもあれだけ仲の悪かった二人が一緒に帰ってきて、何もないわけない」
「ああ。絶対何かある」
「どうする?」
「寮生には気を引き締めるように言おう。これまで以上にランク、成績、言動に気を配れって」
「うん。……嫌な予感がする」
肩にもたれたまま言うと、耳元で小さな笑いが溢れた。
「何?」
「いや、巻き込まれ体質のお前が言うんだから間違いないと思ってな」
「笑い事じゃないんだけど」
「知ってる」
少しムッとしてみても、慧の態度は変わらない。それがおかしくて、変に入っていた力が抜けた。
「とりあえず、城之内先輩のクラスになる俺らは気を抜かない方がいい。何かされる隙を与えないようにしながら様子を見よう」
「うん。謙太にも連絡するね」
「ああ」
思い出すのは1年生の時の事。あの頃は姫以外の寮長・副寮長は皆怖いイメージしかなくて、特に城之内先輩は何を考えているかわからなかった。最後にあんなメールまで。
「何もありませんように」
今までを考えれば叶わないとは思いつつ、呟かずにはいられなかった。
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