一、寮長と副寮長

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一、寮長と副寮長

 暖かな色の絨毯に、草木模様が入った壁紙。ソファーはふかふかで座り心地がいいし、木枠に彫刻細工が施されたテーブルは柚子先輩のお古をもらった思い出のもの。入学した時から変わらないベッドは天蓋付きだし、天井には小さなシャンデリア。  広々としていて、お気に入りの家具に囲まれた大好きな部屋。  そこで咲希は新しい制服に袖を通した。デザインは入学した時から変わらない。だけど入学してもう六年だ。身長もサイズも何もかもが変わっていく。  薄水色のシャツに、薄グレーのカーディガン。学園指定のチェックスカートを履き、いつものチャームネックレスを首にかける。  髪はまとめてポニーテールにし、アイブロウとアイラインとチーク、そしてリップティントでメイクを仕上げれば準備は完了だ。 「お待たせ」  声をかけると、ソファーでパソコンを見ていた慧が顔を上げた。 「どう? 大丈夫かな?」 「似合ってる」  さらりと言ってくれる慧に、最初は驚いたり照れたりしたりもしたけれど、最近は慣れてきた。差し出されたマグカップを受け取り、隣に腰を下ろしてパソコンを覗き込む。 「いい子いた?」 「男子はこの三人、女子はこの子かな」 「了解。誘ってみるね」 「ああ、後良さそうな奴いたら声かけてくれ。でも、別に人数が欲しいわけじゃないから、無理してたくさん声かけなくていいからな」 「わかってるって。あくまでBランク以上の子でしょ?」 「ああ」  そうしていると、玄関扉がノックされた。 「はーい!」 「咲希先輩、私も用意できました!」  顔を出したのは眞子だ。 「今行くー! じゃあ慧、行ってくる」 「ああ」 「ジスラン、行ってくるね」  声をかけ、足早に部屋を後にした。
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