466人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
一、寮長と副寮長
暖かな色の絨毯に、草木模様が入った壁紙。ソファーはふかふかで座り心地がいいし、木枠に彫刻細工が施されたテーブルは柚子先輩のお古をもらった思い出のもの。入学した時から変わらないベッドは天蓋付きだし、天井には小さなシャンデリア。
広々としていて、お気に入りの家具に囲まれた大好きな部屋。
そこで咲希は新しい制服に袖を通した。デザインは入学した時から変わらない。だけど入学してもう六年だ。身長もサイズも何もかもが変わっていく。
薄水色のシャツに、薄グレーのカーディガン。学園指定のチェックスカートを履き、いつものチャームネックレスを首にかける。
髪はまとめてポニーテールにし、アイブロウとアイラインとチーク、そしてリップティントでメイクを仕上げれば準備は完了だ。
「お待たせ」
声をかけると、ソファーでパソコンを見ていた慧が顔を上げた。
「どう? 大丈夫かな?」
「似合ってる」
さらりと言ってくれる慧に、最初は驚いたり照れたりしたりもしたけれど、最近は慣れてきた。差し出されたマグカップを受け取り、隣に腰を下ろしてパソコンを覗き込む。
「いい子いた?」
「男子はこの三人、女子はこの子かな」
「了解。誘ってみるね」
「ああ、後良さそうな奴いたら声かけてくれ。でも、別に人数が欲しいわけじゃないから、無理してたくさん声かけなくていいからな」
「わかってるって。あくまでBランク以上の子でしょ?」
「ああ」
そうしていると、玄関扉がノックされた。
「はーい!」
「咲希先輩、私も用意できました!」
顔を出したのは眞子だ。
「今行くー! じゃあ慧、行ってくる」
「ああ」
「ジスラン、行ってくるね」
声をかけ、足早に部屋を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!