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二、戻ってきた人
新学期。
「おい! 聞いたか⁉︎ 新しい先生!」
「え? 聞いてないけど」
「それが城之内先輩と結坂先輩を見たって奴がいるんだ。ほら、俺らが1年の時の普通科と特進科の寮長!」
「は⁉︎ 嘘だろ⁉︎」
「結坂さんのお兄さんならいいけど、城之内先輩って怖いんでしょ⁉︎」
「怖かったよ! え。どっちが担任なんだ!」
咲希達が教室に入ると、そこはもう噂で持ちきりだった。
「すごいね」
「まあそうなるよな」
苦笑する謙太に、慧も頷く。
「皆顔が引きつってるもん」
咲希も教室内を見回しながら机に荷物を置いた。
この学年までは、アリス以外皆あの二人を知ってる。普通科の徹底したランク主義は有名だったし、玲央は髪まで染めさせられた。特に普通科の生徒は興味津々というより緊張で、席にじっとしていられない雰囲気だ。
華もすぐ近くの席で普通科の生徒と集まっていて、いつもより気合いの入った服装だ。小さく手を振ると、笑顔と共に振り返させる。だけどその笑顔もいつもより強張っているように感じた。
そんな時だ。
「うるさいな」
騒がしかった教室は、扉が開いた瞬間しんと静まり返った。城之内は無表情で教室内を一瞥すると、無言で教壇に立つ。
「Aランク以上はわかるけど、なんで低ランクが立ち歩いて騒いでるんだよ。自分達の立場わかってるのか」
その言葉に、席を立っていたクラスメイト達は弾かれるように動いた。
城之内の声は平坦なもの。それが余計に怖い。
生徒達が慌てて席についたのを確認すると、城之内は表情を作る事もなく口を開いた。
「もう自己紹介の必要はないよな? 君達の担任になった城之内秀樹だ」
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