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誰も何も答えない。それどころか物音一つしない。静けさと緊張感が教室を支配する。
「五年間で随分腑抜けたみたいだな。おい尾村」
「はい……」
城之内が最初に名指ししたのは、普通科の男子生徒だ。
「脱落者制度がなくなって小遣いも増えたから、低ランクのままでもいいと思ってるだろ? 随分成績落としてるもんな?」
「そんな事は……」
「そうか。そうだよな? テストの全科目平均が49点で今回Eランクに落ちるけど、お前にしてはよく勉強した上での成果なんだよな?」
尾村は目に見えて縮こまった。低ランクの待遇が改善されたとはいえ、Eランクだと皆の前で宣言されていい事なんてない。
「井丹」
「はい」
次に名指しされた華は、いつもとはまるで違う小さな声で応えた。
「何で低ランクの奴らがこんなにいい気になってるんだ? 教室だけの話じゃないよな?」
「……はい」
「お前らが甘やかしたんじゃないのか? 雑用をサボっても昼食代を出さないだけ。小遣いが増えたからどうにかなる。そんなんだからつけ上がって好き勝手やるんだろ」
「はい……」
「俺の教育が足りなかったか?」
華はもう何も答えなかった。
華だけじゃない。普通科の生徒は皆体が強張ってる。
最後に城之内の視線は咲希へと向いた。
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