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「お姫様は随分余計な事をしてくれたみたいだね?」
「え?」
「君達が余計な事をしてくれたおかげで俺達が築いてきたものがパァだ。ああ、他寮がサボるおかげで高ランクを維持しやすくなって、君らからしたらいいのかな?」
余計な事というのが脱走の事を指しているのは明らかで、言葉に困る。城之内は返事を待つ事なく口角を上げた。
「これからは今までのようにはいかないからそのつもりで」
城之内は口元は笑っているのに目は笑ってない。その表情はゾッとする程で、背筋に冷たいものが走る。
「じゃあ、このまま授業を始める」
城之内が黒板の方を向いても、暫くの間動く事ができなかった。
休み時間になってすぐ、華にメールを送った。
【放課後あいてる?】
もし万一見られたとしても大丈夫なように、最低限の文章だ。たったこれだけなのに、華はすぐにわかってくれた。
【勿論。行っていい?】
その返事と共に、席から小さなピースサインも送られる。
【うん、来て】
また短い文章を送り返して携帯を閉じる。隣に座る慧に向かって小さく合図を送ると、慧もまた指を二回机に置いた。
昨年までならショップ街の店で声を落として内緒話をしていたけれど、絶対誰にも聞かれないとは言い切れない。一番いいのは。
「お邪魔しまーす」
「好きに座ってね」
誰かの部屋で話す事。そして、華と慧と話すなら、当然咲希の部屋になる。
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