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「それでわざわざ教師になるか?」
「なら、めちゃくちゃ給料いいとか?」
「うーん。きっと安くはないだろうけど……」
そんな理由だけで教師にまではならない気がする。咲希が言うと、華は「だよねえ」なんて苦笑した。
「あの人なら起業とかした方が稼げるだろうし、実家にもお金あるだろうしね」
「そうなんだ」
「聞いたわけじゃないけど、お金使う事への躊躇いのなさとか高級な物知ってるところとか、普通に食べててもテーブルマナー完璧だった事とか考えるとそうじゃないかなーって」
「え?」
珍しい声をあげたのは慧だ。怪訝そうに眉を寄せる。
「どうかした?」
「いや、城之内って苗字珍しいよな?」
「うん」
「金持ちで城之内って一つだけ心当たりがあるんだが……」
「そこの人じゃないの?」
何で迷うのか不思議に思うくらい条件が整ってる。
「いや」
だけど、慧は首を横に振った。
「そういう次元じゃない筈なんだ。うちの実家が百あっても太刀打ちできないような、戦後の日本経済を裏で支えたっていう名家だから教師なんかになるわけないし、何より俺ら世代の子供がいるなんて聞いた事ないからな」
「え、ショッピングモールいくつも経営してる家の百倍⁉︎」
「千でも敵わないかもな。流石にそんな一族が子供を八年も手放すとは思えないし、ましてや教師になんてならないだろ。忘れてくれ」
慧はそれきり別の線を考えだした。だけど何か引っかかる。そして、城之内や一樹が戻って来た目的は、ついに結論は出なかった。
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