466人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
「何で尚人達がそこに座るの?」
ここで取り乱したら城之内の思う壺。笑いもせず、怒りもせず。意識して淡々と尋ねる。
「いや、空いてないし……」
「でも明らかにEランク用の席でしょ?」
「そんな事言っても誰が何ランクかわからないしな」
「尚人達が損な役回りする事なくない?」
普段Sランクらしい事をほとんどしないから、こういう時は効果絶大。教室は城之内が作ったのとは別の緊張感に包まれた。
ーーあとはお願い。
想いを込めて、苛ついているフリをして人差し指と中指で二回机を叩く。
「嘘ついてる奴がいるんだろ。今は洗い出さないでやる。Bランク以下全員ジャンケンで勝った順に座れよ」
「え、何で!」
「俺はBだ!」
慧は抗議の声があがっても何のその。
「公表されるランクじゃないのが悪いんだろ。恨むなら自分と嘘ついてる奴にしろ」
一声で黙らせる。
「早くして、授業時間がなくなるから。……あ、そんな粗末な光景が視界に入るのも嫌だから、次の休み時間に誰か机用意してきてね」
咲希も付け加えると、前方に座るクラスメイト達は渋々立ち上がって円を作り出した。Sランク二人の冷たい声に、Aランクすら何も言わない。
ただ城之内だけは。
「へえ。少しは成長したんだな」
楽しそうに咲希からジャンケンへと視線を移した。
最初のコメントを投稿しよう!