一、寮長と副寮長

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 春休み中の寮は、普段の賑やかさが嘘みたいに静かだ。階段を降りれば。 「咲希、おはよ」 「おはよ!」 「慧は?」 「多分もうすぐ降りてくると思う」  同級生を気遣って早めにドリームランドから帰ってきてくれた博と謙太。 「咲希先輩おはようございます!」 「おはよ、宏太」 「眞子、ミスるなよ?」 「ふーんだ、宏太こそ!」  今年から勧誘部隊として残ってくれる宏太がいる。寧ろ、今の寮にはこれしかいない。 「じゃあ、いってくるね!」 「いってきます!」  三年前初めて新入生の説明会に行った時は緊張して仕方なかった。だけど、今はワクワクの方が勝つ。  先輩達が作り上げてくれた大好きな場所に、また素敵な後輩達が入ってくれますように。もっと賑やかでもっと楽しい寮になりますように。  そう願いながら、校舎へ向かう。  視聴覚室に入ると、新入生達の視線が一気に集まった。緊張を隠せない生徒がほとんどで、知らず知らずのうちに口角が緩みそうになるのを必死に隠す。  ーー懐かしい。  咲希がそう思っているうちに、まずは普通科の、華の番が始まった。 「では私達普通科からはこの学園の根幹たるルールをもう少し説明します。この学園では生徒はパンフレットの評価項目によってS、A、B、C、Eの五つのランクに分けられるわ。高ランクはお小遣いも段違いだし、係の免除とかラウンジの利用とか色んな特権がある。寮への給付金も各ランクの人数によって決まるから、普通科では当然高ランクを優遇します。普通科はそもそもの人数も高ランクの人数も多いから設備も整ってるし、給付金も多いから昼食代も出る。でもその代わり低ランクには、寮の掃除や買い出しなんかはやってもらうから、覚悟の上で入ってきてね」
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