二、戻ってきた人

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 最初はまさか自分がと戸惑ったけれど、口に出してみれば覚悟も決まる。  人を率いるなんて柄じゃない。でも、Sランクは維持したい。先端技術科に不利になる可能性は少しでもなくしたい。大切な人を二度と失くしたくない。 「わかった、なる」  咲希が告げると、また歓声があがった。  7・8年生のAランク以上のメールには、立候補用のリンクも貼り付けられている。まだカレーは半分以上残っているけれど、皆が覗き込む中、携帯を取り出してサイトへ飛んだ。名前、番号、生年月日を入力して、立候補という箇所を押すと。 【結坂咲希様 あなたは一人目の立候補者です】  文字が現れる。 「やった!」 「これで安心ですね!」  わざわざ別のテーブルから立候補を見に来た京子と佳那は、自分の事のように喜んでくれ。 「咲希が生徒会長かあ」 「ほんと早いですよね。あとはメンバーだな」  健司先輩と博はといえば、感慨深そうにこちらを見やる。健司先輩はともかく博は何なのとか、恥ずかしいんだけどとか、言いたい事はたくさんあったけれど、とりあえず口に出す前に飲み込んだ。  その時、携帯が一件のメールを受信した。 「学園からだ」 「何だって?」 「ちょっと待ってね……」  見れば、件名は【生徒会長立候補者様。】 【生徒会長への立候補誠にありがとうございます。  現在猶予期間のため、正式な決定は今週金曜日午後6時までお待ち下さい。  他に立候補者がいなければその時点で結坂咲希様を正式に生徒会長に任命し、もし他に立候補者がいれば、協議の上ジュエルゲームを開催致します】  皆、「まあ大丈夫ですよね」「普通科に咲希が立候補した事伝えとけよ?」なんて言っていたから、安心していた。だけど、その安心は二日後覆される。
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