二、戻ってきた人

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「どうする⁉︎」 「どうするも何もなあ」  慧は答えながら、何やら指を動かした。それと同時に謙太の携帯が振動する。 「どうだ?」 「え、何か票が増えた……慧からだって」 「やっぱりな」  慧は訳知り顔で続けた。 「咲希への票の移動は四月三十日にしかできないって事は、つまり他の生徒同士は票の移動ができるって事だ。四月三十日に票集めしてたんじゃ遅い。その前に先端技術科四十人で十票ずつ票を集めておけば勝ち確定ってわけだ」  学園の生徒は1年生から8年生で約七百人。確かに過半数をとれば勝ち確定だ。だけど。 「でも、それって普通科に有利じゃない?」  普通科の生徒数は先端技術科の十倍近い。 「何言ってるんだよ、そこが力の見せ所だろ?」 「ジュエルゲームとかって事?」 「そういう事だ」 「同じ手を普通科も使ったら?」 「それは……」  その時だ。今度は慧の携帯が震えた。慧はそれを確認すると、無言で咲希に手渡した。  見れば慧の票は1票。さっき謙太に渡した筈なのに。そう思えば、上に『結坂尚人から1票』の表示があった。
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