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あの大脱走があってからはじまりの家は封鎖されてしまったから、もう使えない。咲希が案内したのは先端技術科の談話室だ。
今日ばかりはテーブル一卓と椅子四脚以外は端に寄せ、勧誘面接仕様になっている。奥の椅子には既に慧が座っていた。
「良かった、座って」
「……はい」
「コーヒー、紅茶、日本茶、ジュースがあるけど、何がいいとか苦手とかある?」
「何でも。苦手なもの、特にないです」
歌が慧の向かいに座ると、咲希は談話室の右端、飲み物や軽食が並ぶテーブルの前へと移動する。
ーー今日は暑いからアイスティーにしよう。
グラスを3つとり、氷と、シロップ漬けのマンゴーを入れる。そしてミニ冷蔵庫から冷やしておいた濃い目の紅茶を取り出して注げば、簡単アイスマンゴーティーの完成だ。
静かに二人の前に置き。
「ありがとう」
「……ありがとうございます」
「うん、飲みながらリラックスして聞いてね?」
慧の隣に腰を下ろす。
すると、慧は早速本題に入った。
「藤峰歌さん、君に是非先端技術科に入ってほしいと思ってる。どうだ?」
数秒間の沈黙が流れた。
「……あの」
「ん?」
やっと重い口が開いたかと思えば、返ってきたのは思ってもいなかった言葉。
「私、どこの寮がいいとか興味ないんで」
慧の体がぴくりと動いたのがわかった。
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