一、寮長と副寮長

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「……何でだ?」  慧は努めて冷静に聞く。 「だって、いい暮らしがしたければ高ランクになれって事ですよね? 結局個人で頑張るしかないんですから、どこの寮でも関係ないじゃないですか」 「私は変わると思うよ? ほとんどの人が八年間一つの寮で過ごすんだから、環境や周りの人は大事だと思うし」 「私、つるむのとか好きじゃないんです」 「勉強だって、成績がいい先輩が多いからわからないところはいつでも教えてもらえるよ?」 「わからないところ、あんまりないですし、勉強は一人でやる派なんで」  咲希が口を挟んでも、表情一つ変わらない。  ーーどうしよう。  考え方の違いとかじゃない。もっと根深い。思わず途方にくれてしまう。 「……わかった」  暫くの沈黙の後、慧は重い口を開いた。 「君がそういう考え方なら、多分特進科の方があってると思う」 「慧!」 「私もそう思います」 「だけどな、特進科に入っても何も変わらず卒業するぞ? 八年後、ああ、ここに入って良かったと思いながら卒業できるのは先端技術科だ」  慧はきっぱりと言い切った。 「……断言するんですね」 「ああ。俺も咲希もここに入って良かったって心から思ってるからな」 「何がそんなにいいんですか?」 「一番は寮の皆に出会えた事だけど、それは刺さらないだろ? 高ランクが多いから設備もいいし、部屋も広い。昼食代も出る」
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