一、寮長と副寮長

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「へえ」  まるで何でもない事のように、楽しげな笑みを崩さない。 「このタイミングで声をかけるって事は、成績いいんですよね?」  今日はいつもの席関係なく、皆で一つのテーブルに座っている。宏太はフライパンから肉をさらいながら尋ねた。 「ああ。小学校の通知表では勉強は全て5。大手塾にも通っていて、塾の毎月のテストでも常に全国順位一桁」  慧は答えながら二個目の卵を溶き始める。続きは咲希が引き継いだ。 「ご両親がオペラ歌手とミュージシャンで、藤峰さん自身もジュニアオペラコンクールの優勝者。学力と選択科目だけなら間違いなくSランクになれると思う」 「えーすごい! でも咲希先輩が言うなら確かですよね」 「音楽一家だから歌って名前なんだね」  眞子と謙太も感嘆の声をあげながら、溶き卵の中にどんどん肉や野菜を入れていく。 「でも大丈夫なんですか? そんな協調性のなさそうな子。うち、あわないんじゃ……」 「大丈夫だって、宏太! ここに前例がいるから」 「え?」 「な、博?」  健司が笑いかけるのと同時に、全ての視線が博に集まった。話の途中から気配を消していた博は、気づかれたとばかりに苦笑した。 「まあ……そうですね」 「え、何で博先輩が?」 「入学当初は俺ら心配してたんだぞー?」 「黒歴史引っ張り出さないでくださいよ」 「あー確かに。博と慧、仲悪かったよね」 「えーっ⁉︎」 「嘘ですよねっ⁉︎」  謙太の言葉に、5年生二人組は驚きの声を上げた。
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