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週明け。いつも通りの放課後が訪れると。
「あー! 終わったー!」
「疲れた!」
「バスケして帰ろうぜ!」
教室は喧騒を取り戻した。
咲希も帰り支度をしながら、何をしようか思いを馳せる。すると、隣に座る慧から声がかかった。
「咲希、時間あるだろ? お茶飲んで帰ろう」
「うん、行く!」
断る理由もなく即答すると、慧の口元が緩んだ。
誘われたのはラウンジだ。ほぼ高ランクしか来ないラウンジは、月曜日という事もあって他の生徒の姿はない。Sランクである咲希と慧が入ればすぐに個室へと案内される。すぐに頼んだ飲み物もきて、二人だけになった。
「こうやってラウンジに来るのも久しぶりだね」
「そうだな」
「日常に戻った感想は?」
「先輩達とか京子達みたいに付き合いがあった人はいいけど、下級生には避けられてるな」
「え、嘘⁉︎」
全てが終わって新年度になってからは、昨年みたいな緊張感はどこにもない。
「本当だ、特に女子には呼んだだけでびくつかれるんだぞ?」
「でもそれは昨年厳しくしてたからでしょ?」
とか。
「あ、でも康介も最初はそうだったって姫が言ってた」
「康介先輩は表情あんまり変えないだろ!」
とかたわいもない話をして、二人して笑った。
そんな時だ。扉がノックされたかと思うと。
「お連れさまがいらっしゃいました」
「え?」
ゆっくりと開けられる。
ーー誰だろう。
思わず身構えてはみたものの、そこにいたのは。
「悪い、お前らがここにいるなんて思わなくて」
「待ち合わせだって勘違いされたみたい」
困り顔の博と謙太だった。
「何だ!」
さっき別れたばかりの二人と思いの外早く再会してしまった事に、笑みが深くなる。
「俺ら窓際の席に変えてもらうから」
「え、ここで一緒にいればいいじゃん」
一向に入ってこない二人に声をかけると、二人の表情は更に困惑したものになる。
「いや、ダメだって!」
「え? 何で?」
「デートの邪魔だろ」
「え⁉︎」
「は?」
咲希が驚くと、慧はそれに対して驚いてみせた。と、いう事は。
「……これ、デートだった……?」
咲希が呟くと、深いため息と共に。
「いいよ。博、謙太、一緒に飲もう」
慧の口から諦めたような言葉が飛び出した。
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