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一
学年が一つ上がっても、学園の暮らしは変わらない。
春休みは目一杯遊んで、新入生が入ってきて、学校が始まれば週五日授業を受ける。カフェのケーキは相変わらず美味しいし、ショップ街には可愛い物が揃ってる。
大きく変わったのは。
「マジやばいって!」
「だよなー!」
「この後どうする?」
「俺の部屋来る⁉︎」
「お、そうしよ! お菓子買っていこうぜ!」
学園が賑やかになった。
賑やかと言えば聞こえはいいけれど。
「どこ寄ってくー⁉︎」
「他のお客様がいらっしゃいますので、お静かにお願いします」
「あ、すみませーん!」
脱落者制度がなくなって、低ランクの危機感がなくなった。ランクが下がってもお小遣いが減るだけ。もう高ランクの言う事を聞かなくても、脱落者になる心配はない。
ーーそれはわかるけど、これはない。
放課後一人で入ったカフェで、咲希は小さく顔を顰めた。せっかく買い物をして楽しい気分だったのに、大きな声で騒ぐ人達のせいで台無しだ。
見た目からして低学年。そして、あまり見覚えがないから恐らくBランクより下。
楽しいのはわかるけど、人の迷惑になるのはいただけない。
「騒がし」
だけどその呟きは。
「あーうるさい」
もっと大きな呟きにかき消された。
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