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「お前なあ……」
博は咲希の隣に座るなり、呆れたようにため息をついた。
「だって仕方ないじゃん。デートなんてした事な……健司先輩としかした事ないんだもん」
「あれをデートと呼ぶな」
「咲希、健司先輩と何したんだっけ?」
「パフェ一緒に食べて、亜実先輩へのプレゼント一緒に選んだかな?」
「それはもう、康介先輩と出かけたのをデートとカウントするのと同じだ」
謙太の問いかけに恐る恐る答えれば、そう断言される。
「……ごめんなさい」
小さな声で謝罪の言葉を口にするしかなかった。
そこによく知る声が響いた。
「さいってーっ!」
「これって……」
「華の声だよ」
いつの間に来ていたのかはわからないけど、間違いない。少し離れたオープン席にいるらしい。話し声までは耳を澄まさないと聞こえないけど、興奮した声はばっちり聞こえてくる。
「華、今日初デートの筈なんだけど……」
ーーどうしたんだろう。
咲希がそんな事を考えてる間にも、華は声を荒げた。
「最初からそういう目的だったわけね!」
「そうじゃない! 誤解だって!」
男は声だけでは誰かわからないけど、多分華が話していた彼氏だ。
「なら会わせない。絶対に、ずっとね! それでも私と付き合う?」
「だから、彼女の友達とも仲良くしたいって思うのは普通の事だろ⁉︎ ほら、友達ぐるみの付き合いだって!」
「やっぱり会いたいんじゃない! どこの世界に初デートで次はダブルデートしようなんて言う馬鹿がいるのよ! 咲希達と仲良くなって人脈高くしたいだけでしょっ⁉︎」
その内容に、思わず目を見開いた。
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