「なっ……」
華は男に言い返す隙も与えず、続けた。
「入学からずっとSランクで、あんな脱走まで成功させて学園を変えちゃったのに! もう誰も敵わないのに、すごい努力を続けてるの知ってる⁉︎ 休みの日もプールで何時間も泳ぐし、Sランクはあてられないのに宿題も絶対サボらない! ノートだって同じ問題何回解いたんだろってくらいびっしりなんだよ! それなのに教室でもぜんっぜん偉ぶらないし! ……私がランク落ちした時も、周りは皆掌返してきたのに咲希だけは助けてくれた! 教室以外でほとんど話した事もないのにさあ!」
「はっ! 甘いって有名だもんなあっ! でもこんな女だって知ったらどうなるかな⁉︎」
「そーだよ、咲希は甘々だよっ! ずっと友達になりたくて、やっとなれたんだ! てめえが変な事言って友情にヒビでも入ったら!」
そこで華は一度言葉を切った。妙な緊張感の中、絞り出されたのは今までで一番低い声。
「まじで校舎歩けなくすっからな」
ここからでは表情も動作も何も見えない。声だけだ。なのにすごい迫力が伝わってくる。
そしてもう一つ。本当に、心から友達だって思ってくれている事も。
「……そういえばクリスマスパーティーの時も走って呼びに来てくれたよね」
「あれなら安心だわ」
謙太と博はまるで感心するかのように呟いた。
「いい友達だな」
「うん!」
慧の言葉に頷きながら立ち上がり、勢いよく個室を飛び出す。
「華っ!」
「咲希っ⁉︎」
「え、結坂さん⁉︎ 何で⁉︎」
「こんな男捨てて、約束より早いけどパフェ行かない⁉︎」
もう男は目に入らなかった。驚く華がおかしくて、それ以上に嬉しくて、表情は緩みっぱなし。
この日から華は親友になった。
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