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────俺の産まれた村は、海沿いの寂れた村だった。
海沿いにあるってのに、流れが悪くて海水浴なんか期待出来ない。目玉になるようなものなんて何もない。
それでも時々、観光客が来る。海沿いに建っている神社に参拝に来るんだ。俺の産まれた村から離れた場所に建つ神社。これが穴場的スポットみたいに時折参拝者が来る。
俺たち村の子どもたちは、絶対に神社に行ってはならないと念を押されていた。村の大人たち、老若男女問わず、絶対に足を踏み入れてはいけないと口を酸っぱくして言われ続けていた。
子どものころは何で行ったら駄目なのか納得出来なかったけど、神社へ行った帰りの参拝者を捕まえて訊くと、特に何もないらしい。一般的な普通の神社だと。誰に訊いても同じ答えで、段々興味も失せた。話題にするだけで大人に怒られたし。
それと、もうひとつある変な風習。
神社の方角に向かって埋もれるように建つ小さな社。一年に一度、それに三日三晩祈りを捧げないといけない。何のための社なのか、何に捧げる祈りなのか。何にも判らない。
どんな順番で回ってくるのかよく判らないけど、俺の親父も三日三晩やっていた。さすがに自分の親がやるとなったら好奇心も沸いて、あとからこっそり尾けて行ったら簡単にバレて恐ろしいほど怒られた。身内とか他人とか関係なしに、とにかく村の大人たち全員ってぐらいに怒鳴られた。軽くトラウマだ。
そんなんで、とにかく理由も何も教えてくれないのに、神社には近付くな、社には三日三晩祈りを捧げろ、となったら面白くない。それにいい加減こんな寂れた村に嫌気が差してたころだ。
俺はこんな村から出ることにした。
東京まで行かなくても、ちょっと隣の県まで行ってそこから新幹線に乗ればそれなりの都会に出れる。そこの大学に行きたかった。在籍している間に資格を取って卒業すれば、就職も有利になる。何ひとつ無茶なことじゃない。こんな何もない寂れた村にいるより現実的だ。
なのに、もの凄い勢いで大反対された。
村の大人たち全員から、もの凄い形相で怒鳴り付けられたんだ。何でだ? こんな村に居ても未来はない。親が都会に行くのを心配して反対するのは判る。だけど何で村の人間からこんなに反対されなきゃいけない?
当然、反発心は半端なくて、俺は村を飛び出した。やりたいことをやって何が悪い。
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