サブマージ・サマー

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「那月、俺たちも行こう。花火綺麗だよ」 「そうだね」  差し出された彼氏の手を再び取る。ずっと探し回っていてくれたのか、さっきよりも汗をかいていた。その手に引かれて歩き出す。木陰を出ると、美しい花火が空に咲いていた。空いた手に落とさないよう電球ソーダを持つわたしも、人混みになっていく。  ——ああ、七瀬、わたしも早く大人になりたいよ。こんな小さな子供だけの世界に縛られているようじゃ、どこにも行けない。早く大人になって、自由になって、七瀬が好きだと口にしたい。声を大にして言いたい。  七瀬はちゃんと高校に行くのかな。できたら高校も、一緒がいいな。喧嘩をしている七瀬もきっとかっこいいんだろうけど、わたしは制服を着ている七瀬がすっごく好きだから、もっと見ていたい。  今度、七瀬の家に行って聞いてみよう。また犬の散歩に付き合おう。二人きりで出掛けたって構わない。どうせ誰にも理解されない絆だ。きっと誰にも見つからない。 [完]
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