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どこかへ向かう七瀬の後ろをわたしはついていく。視界も悪いし足場も悪いし何よりこんなに人がいる。だけどわたしは、七瀬が立ち止まるまで彼の姿を見失うことはなかった。
お社の周りをぐるっと囲むように並ぶ屋台。参道のど真ん中を堂々と歩く七瀬。まるで神さまみたいに、彼の周りを人がよけていく。拝殿の隅の木陰にある、少し大きい二つの石にそれぞれ腰を下ろす。
「あー、あっつい」
七瀬は浴衣の裾を持ち上げ制服の女の子みたいにパタパタと風を起こす。白くてしなやかな筋肉がついたその足を惜しみなく晒すので、狐のお面を頭上へずらし、思う存分眺めさせてもらう。
「なんで浴衣なんか着たの?」
「着ろって言うから」
「わたし言ってないよ」
「なっちゃんじゃない、彼女。この、自意識過剰め」
「だって」
口を膨らますと、伸びてきた七瀬の白い指が頬を突く。
だって、昔からそうじゃないか。七瀬はわたしがお願いしたことならなんでもしてくれる。だから、今日だって、わたしの心の願いが通じたのかとばかり。
「そういえば、初めてだね」
石の上で胡坐をかく七瀬は、頬杖を突き、わたしを見上げるように見ている。
「なにが?」
「なっちゃんと夏祭りに来るの」
「そうかな……そうだね」
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